症状

貧血

血液の中には「赤血球」と呼ばれる血球があり、血液の赤さのもとになっています。その役目は血液の流れに乗って全身の細胞に栄養分(酸素)を届ける、「栄養の運搬係」です。この血球が少なくなると酸素配分がうまくできなくなって心臓や肺に負担がかかり、息切れやだるさを覚えるようになります。この状態を「貧血」と呼び、血液検査ではヘモグロビン(Hb:基準値は概ね12-15g/dL)の値が低くなったときにそう診断されます。血液内科を紹介される徴候としてもっとも多く、主な原因は月経出血(女性のみ)、消化管出血(胃潰瘍など)、ビタミン不足や慢性の病気(関節リウマチなど)に伴う場合などですが、胃の手術後に起こる場合もあれば、血液を作る工場(骨の中にあり、骨髄と呼びます)に問題があることもあります。検査としてはまず血液検査や便の検査をしてその原因が見つかればその治療をするし、それでも分からない場合には骨髄の検査を考慮します。

 

白血球増多と減少

血液中には「白血球」と呼ばれる血球があり、細菌やウイルスなどの外敵をやっつける、「体の防衛軍」として働いています。白血球の数は大体1μLあたり4,000-8,000個くらいが正常ですが、いろいろな理由でかなり変動します。例えば風邪を引いたり肺炎にかかったとき、一時的に増えたり減ったりするだけなら異常ではありませんが、特にそういうことがないのに異常を示す場合に、血液内科へご紹介いただくことがあります。その場合、まず血液細胞を顕微鏡でみたときに見慣れない細胞がいないか、どういうタイプの白血球が増えたり減ったりしているのか、全身的な病気が何か隠れていないか、を注意深く調べます。場合によっては骨髄の検査をすることで、放っておいてよいのか、治療が必要なのか、を見極めます。

 

血小板異常

血液中には「血小板」と呼ばれる血球があり、血管が破れて血が出たときに、その穴をふさいでくれる「糊」のような役割を担っています。一般に1μLあたり15-40万個くらいが正常ですが、これが減ったときには出血が止まりにくくなります。少し減ったくらいでは無症状ですが、3-5万個/μL以下まで減ると、どこにもぶつけた覚えがないのにアザができたりします。原因としては、自分で自分の血小板を壊してしまう、血小板を作る働きが弱くなってしまう、出血や血栓症などで血小板がどんどん消費されてしまう、などの状態があります。また逆に血小板が増えすぎてしまう(100万個/μL以上)こともあり、そのままだと脳梗塞や心筋梗塞を起こす危険性が高くなります。それぞれの場合に適宜血液検査や骨髄検査を行うことで診断し、適切な治療を行うか、あるいは軽症と判断すれば経過をみることもあります。

 

リンパ節腫脹

白血球の中には「リンパ球」と呼ばれる血球があり、これは細菌やウイルスをやっつけるためのいわば「司令塔」のような役割を持っています。リンパ球は血管を出て全身の組織中に入り、細菌やウイルスが体に入り込んでいないか、絶えずパトロールしてくれています。そしてリンパの流れに乗って「リンパ節」といういわば派出所のようなところに待機し、外敵の侵入に備えます。リンパ節は全身のいろいろなところに散在しており、例えば風邪のときに首のリンパ節が腫れることはよく経験されると思いますが、それは風邪を引き起こすウイルスをやっつけるために、リンパ球が増殖しているからです。血液の病気の一部や膠原病、ウイルス感染により、全身のあちこち、もしくは一部のリンパ節が腫れることがあり、よく血液内科を紹介されます。血液検査に加え、CTなどで体の深部のリンパ節の腫れをみたり、骨髄検査をしたりした上で、必要であればリンパ節を手術で取ってくるという処置(リンパ節生検)を行います。

 

不明熱

風邪や肺炎で熱が出ることはよくありますが、そういう原因がはっきりしないまま、熱が続くことがあります。このような場合に、血液内科の病気、あるいは自己免疫の病気が隠れていることがあります。主に病院の中で各科の担当医から相談を受ける場合が多いのですが、血液の病気がないかどうか、血液検査やCT検査、骨髄やリンパ節の検査を行い、診断の助けになるような所見があるか否か、を調べます。

 

 

血液は全身を流れているため、血液内科が扱う病気の徴候も多岐にわたります。ここに挙げた以外の徴候で受診・紹介されることも多いのですが、どの部位のどのような徴候・症状であれ、適切な診断と治療を決定・提供できることが大切です。血液内科を受診するように言われたら、できるだけ先入観なく担当医師の話をよく聞いて、分からないことはどんどん質問してみて下さい。「他の医者の話も聞いてみたい」と思われたら、遠慮なく言っていただければ、速やかにセカンドオピニオン受診を手配します。少しでも不安な気持ちを取り除き、安心して検査や治療を受けられるよう、私たちは精一杯努力しています。その目的のため、このページが少しでも理解の助けになれば幸いです。

最終更新日:2014年10月1日

(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科