分子標的薬の臨床応用が進むと共に効果予測因子検査の重要性が増している。我々はこれまで肺がん症例において全自動SNP検出装置 i-densyⓇ (Arkray社)を用いて新規EGFR変異高感度検出系であるmutation-biased PCR and quenched probe system (MBP-QP) 法を開発し、血漿DNAを用いたliquid biopsyの系を確立してきた。このMBP-QP法を用いて高感度KRAS遺伝子変異検出系の開発を行った。KRAS遺伝子変異は肺がん10-15%、大腸がん35-40%、膵がん80-95%など種々の腫瘍で認められ、大腸がんでは抗EGFR抗体の予測因子として臨床応用されている。MBP-QP法を用いた検査系は、KRAS遺伝子変異5種類(G12S, G12Y, G12A, G12V, G12D)を検出する検出系であり、これらの変異は肺がん、大腸がん、膵がんより検出されるKRAS遺伝子変異の各々88%、72.3%、85%を占めている。プラスミドを用いた感度検索では、1-8コピー、細胞株から抽出したDNAでは0.02-0.04 ngであった。野生型DNA存在下では、0.025-0.3%の変異DNAを検出する事ができた。現在、この検出系を用いて、大腸がん、膵がん症例で血漿遊離DNA中よりKRAS遺伝子変異の同定が可能か検討中である。
最終更新日:2014年10月1日
(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科