木村らは日本新薬と共同で、メシル酸イマチニブの約55倍強力な第2世代ABL阻害剤バフェチニブを開発した。バフェチニブの臨床第I相試験は、欧 米で終了し良好な結果が得られ、現在臨床第II相の準備中である。イマチニブ、バフェチニブなどのABL阻害剤が慢性骨髄性白血病(CML)の予後を改善 することは間違いないが、これらの薬剤もCML幹細胞やある種の変異ABLを有するCML細胞には効果がないことも明らかとなった。これら残された課題を 解決するため、CML幹細胞の特性解明および新規の分子標的薬の開発に取り組んでいる。
参考文献:Blood 106: 3948-3954, 2005、Proc Natl Acad Sci USA 103: 14907-14912, 2006、Blood 109: 306-314, 2007、Cell Death Diff 14: 1667-1677, 2007、Mol Cancer Ther 7: 48-58, 2008、Cell Death Diff 15: 1712-1722, 2008
ゲノム創薬が盛んに行なわれているが、実際の臨床で使用されているほとんどの抗がん剤が天然有機化合物であることも事実である。人間の英知を超えた 自然には、未だ多くの有望な化合物が残されている。我々は、ブラジルの熱帯雨林に自生するオトギリ草から強力な抗腫瘍活性をもつ化合物GUT-70を見 出した。GUT-70をシーズとし、さらに有効な抗がん剤の開発を試みている。
参考文献:Int J Cancer 113: 158-165, 2005、Brit J Cancer 104: 91-100, 2011., Bioorgan Med Chem Lett、23:606-9, 2013、 Chem Biol 18: 743-751, 2011
ヒトのがんの多くは低酸素状態にさらされており、低酸素の環境に対する生体反応は発がん、浸潤、転移において重要な重要であり、HIF-1αはその central mediaterと考えられている。末岡らは広島大学、谷本博士との共同研究によりHIF-1αトランスジェニックマウスを用いて発がん感受性、リンパ球 の分化との関連について検討を行っている。
参考文献:Blood 117: 3575-3584, 2011
最終更新日:2014年10月1日
(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科