よくテレビの健康番組などで「リンパの流れが悪い」などと言われ「リンパ」という言葉そのものは馴染みのある言葉ですが、悪性リンパ腫とは何でしょうか。簡単に言えば「リンパのがん」です。血液と同様に全身に張り巡らされているリンパ系の組織から発生する悪性腫瘍です。全身にある臓器から発生するので、悪性リンパ腫は全身のどこで発生しても不思議ではありません。悪性リンパ腫になると、体のいろんな部位に痛みを伴わないしこりが触れるなどの症状がみられます。また全身的な症状として、発熱、体重の減少、寝汗を伴うことがあります。
もし悪性リンパ腫が疑われたら、どんな検査をするのでしょうか。まずはしこりを含むリンパ節をとってくるリンパ節生検を行い、上記のような分類方法で臨床経過や予後を予測します。それから病気の広がりをみるために胸部X線検査(レントゲン)、コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴検査(MRI)、ガリウム(Ga)シンチグラフィー、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(PET)、骨髄検査、腰椎穿刺、消化管検査、またウイルスを含む血液検査など行います。
「悪性リンパ腫」と一言で言っても、その中にはたくさんの種類があります。分類する方法には①「どのような細胞からできているのか」というものと、②進行の速度によるものがあります。
悪性リンパ腫を顕微鏡で見るとホジキン細胞という特徴的な細胞があることがあります。これがあるか無いかで、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに大きく分けます。日本では約90%が非ホジキンリンパ腫です。
非ホジキンリンパ腫はさらに、顔つき、細胞の種類、染色体・遺伝子情報などをもとに分類されます。最近のWHOの分類では30種類以上にまで細かく分けます。その分類をもとに腫瘍細胞の悪性度とその後の臨床経過、予後を推定します。
発症してからの病気の進行速度によって大きく3つに分けます。診断された病気を、治療しないで放置した場合に推測される予後ですので、治療経過によって診断時点で推測された予後から変わることがあります。
進行の速度が速いタイプを高悪性度、遅いものを低悪性度、その中間を中悪性度と分類します。高悪性度だからと言って絶望的な気持ちになってしまうとか、低悪性度だから安心できるのるかというと、一概にそうとも言えません。高悪性度でも治療が著効すれば根治を望むこともできますし、低悪性度でも治療が効きにくく、治療が難しい場合もあります。
治療方法は悪性リンパ腫の種類と広がり、患者さん自身の体力などを評価して決めます。入院して抗癌剤による治療をすることが多いですが、病変が局所に限定している場合は放射線治療のみになることもあります。また低悪性度で急激に大きくなるような様子が無いときは治療せずに経過を観察するだけ、という選択肢もありえます。
最終更新日:2014年10月1日
(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科