2017年7月1日 北海道 旭川の旭川グランドホテルにて 第32回 日本肺癌学会ワークショップ (世話人 旭川医科大学病院 呼吸器センター教授 大崎 能伸先生)が開催されました。
「最先端の基礎研究の成果から将来の肺癌治療法を想像する」というテーマのもと、国内外の分子標的療法、クリニカルシークエンス、腫瘍免疫学の第一人者の先生方のお話を拝聴することができ、とても濃密な一日となりました。
(会場の旭川グランドホテル) |
(さわやかな気候!空が広い!) |
当科からは 荒金 尚子 呼吸器内科診療教授が、第一部の中で「液体生検の展望」と題して講演を行いました。我々が実臨床の中で積み重ねてきた、血漿DNAによる高感度変異検出系でのEGFR T790Mモニタリングを通して得た知見、具体的には、どのようなタイミングで血漿検体を提出すべきか、結果の解釈はどのように行うべきか、に関してお話ししました。現在まで倫理供給されてきた血漿でのEGFR T790M変異検査ですが、保険診療として測定できるようになるのに伴って、検査回数に制限がつく模様です。Liquid biopsyの最大のメリットは低侵襲のため反復検査ができることであり、それが薬剤耐性のモニタリングに有用とされる所以であることから、実際に検査・治療を行っている我々臨床医が、その適応について発言していく必要性をディスカッションできたのではないかと思います。
また、第一部の中では、クリニカルシークエンスの台頭に伴って、organ-basedか、molecular-basedか、その臨床試験の枠組みも大きく変化しつつあること、All Japanで膨大なデータ集積を実現しているJC-SCRUM Japanがついに血漿検体のNGSにも乗り出されることなど、興味深い演題が続きました。
また、ランチョンセミナーではEGFR T790M変異によるEGFR-TKI耐性化メカニズムの解明で御高名な 小林 進 先生のお話も拝聴することができました。T790Mを見つけた時のシークエンス生データなど、当時のお話も臨場感があり、またEGFR-TKI耐性化だけではないT790M変異がもたらす細胞内でのEGFR動態の変化についても知ることができました。EGFRという分子についてもまだまだ未知のことが多いものですね。
(荒金先生の講演) |
(小林 進先生を囲んで) |
午後からは主に免疫療法をテーマとしたご講演で構成されていました。どうしてもPD-1, PD-L1、tumor mutation burdenなどの免疫チェックポイント阻害剤の効果予測因子に目を奪われがちなところですが、もっと根本的な免疫システム、抗原提示能力が個々人が持つHLAの拘束性に依存することや、腫瘍特異的獲得免疫が機能できるよう橋渡しする自然免疫の誘導についてなど、免疫学を研究してこられた先生方ならではの分かりやすいご講演は、大変勉強になりました。がん免疫療法の進歩は、まさにブレイクスルーと呼ぶにふさわしいものですが、まだまだ発展が期待できそうですね!
7月の北海道には初めてお伺いしましたが、さわやかでとても過ごしやすい気候でした。今回は旭川医科大学 呼吸器センターの若手の先生方と交流することもできたのですが、それぞれの先生方が積極的に研究・臨床に取り組んでおられることをお聞きし、とても刺激になりました。北海道から九州まで、お互いに切磋琢磨し情報を共有しあって、日本発のよりよい研究成果を患者さんにお届けできるようにしたいです!
最終更新日 2017年7月4日
(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科