2017.10.14-15 横浜市のパシフィコ横浜にて第58回 日本肺癌学会 学術総会が開催されました。また引き続く2017.10.15-18 同会場にてIASLC 18th World Conference on Lung Cancer (WCLC:世界肺癌)が開催されました。日本全国のみならず、世界各国から肺がん研究・診療に携わる人たちが一堂に会するこの機会に、当研究室からも演題を提出・発表してきました。
肺癌学会においては
O5-1 Liquid biopsyにおける適切なpre-analytical procedureとは何か (中島)
O35-1 血漿分子マーカーを用いたafatinib耐性化機序の検討 (中村 朝美 助教)
P24-8 肺癌患者における血漿遊離DNAの特性 (安部 友範 先生)
P25-9 MET exon14 skipping変異を認めた非小細胞肺癌の2例 (小宮 一利 助教)
を発表しました。(演題番号順)
中村先生;afatinib耐性の患者さんにおけるEGFR T790Mの検出、C797Sの検出とOsimertinibの治療効果について解析・検討されたものです。 |
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安部先生;肺がん患者さんの血漿DNAの特性についてまとめられた研究です。今後の我々の研究の基礎となり根拠となる重要な内容です。 |
小宮先生;LC-SCRUM Japanに提出した検体で稀な遺伝子変異が見つかり、治療に結び付いた症例を報告しました。 |
演題からもお分かりの通り、我々は肺がんの遺伝子検査を中心に研究を行ってきました。現在はLC-SCRUM Japanにより無料で検査を受けられ、その検査結果を特異的治療に結び付けられる体制が構築されていることは、我々臨床医にとっては本当にありがたいことだと思います。的確な分子生物学的診断と治療選択により、肺がん患者さんの生存期間は大いに延長していますが、今はまだ恩恵を受けられていない方々にも、次につながる新しい知見がこれらのデータの蓄積の中から得られてくるものと思います。
さて、引き続くWCLCでも演題を発表してきました。
Characteristics of cell free DNA in lung cancer patients (安部 友範 先生)
Correlation and problems of re-biopsy and liquid biopsy for detecting T790M mutation
(小宮 一利 助教)
Clarification of mechanisms of acquired resistance to afatinib using plasma samples
(中村 朝美 助教)
また、呼吸器内科 診療教授の荒金 尚子 先生がLiquid biopsyのDiscussantに選ばれ、血漿や液体成分による次世代シークエンス解析に関連した演題について総括されました。
Discussantとして登壇した荒金先生 |
英語で質疑応答中の安部先生 |
学会中に風邪をひいてしまった中村先生 |
この演題について取材を受けた小宮先生 |
冷たい雨がそぼ降るパシフィコ横浜 |
こんなに広い会場。(この後ほぼ満席に) |
我々が現在行っている「第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤効果予測における血漿遊離DNAの有用性についての研究(UMIN000025930)」(S-PLAT試験)の中でも血漿による次世代シークエンス解析を行いますが、その点でも今回の学会では参考になる情報がたくさんありました。本年4月のAACRの際にはまだ混沌としていたこの分野でも、概ね趨勢が決まりつつあるようです。
急に寒くなり冷たい雨の降った横浜でしたが、本学会で研究についての色々なヒントをもらい、世界の研究者が今も新しい化合物・検査系の開発や病態解明のため日夜切磋琢磨していることに、暖かい気持ちになり帰路に着いたのでした。
(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科