嬉野先生・進藤先生の論文が、Cancer Immunology Researchに掲載されました。
成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia: ATL)は極めて予後不良の造血器腫瘍ですが、近年新薬モガムリズマブ(抗CCR4抗体)の導入後、治療法は日進月歩です。ただ、モガムリズマブは患者さんの免疫動態をも変容するため、今までにない合併症を来すことがあり、注意が必要です。今回の論文では、モガムリズマブを投与された2症例について、詳細な免疫学的検討を加え、まとめました。
骨子は、以下の2点です。
1. ATL細胞はCD4 T細胞のうち、CADM1+CD7-分画中に選択的に含まれる。
2. Mogamulizumabの投与後、effector Treg(eTreg)が枯渇している間ATLは抑制されるが、重篤な自己免疫病態(皮疹や自己免疫性脳炎)を生じ得る。一方eTregの回復時に自己免疫病態は軽快するが、ATLの再発がみられた。eTregが枯渇している期間は、症例によっては1年以上に及ぶ。
わずか2例の経過をまとめた報告ですが、effector regulatory T cellやCADM1抗原の染色を含めた高感度フローサイトメトリー、また次世代シークエンサーを用いたT細胞レセプターのレパトア解析など、最先端の技術を駆使しています。
ATLの新規治療法開発に貢献することが、期待されます。
Ureshino H, Shindo T, Nishikawa H, Watanabe N, et al.
“Effector regulatory T cells reflect the equilibrium between antitumor immunity and autoimmunity”
Cancer Immunol Res 2016 May 23, [Epub ahead of print]
PMID: 27215229
最終更新日:2016年6月22日