2016年12月19~21日、福岡は博多にて 第57回 日本肺癌学会 学術集会が開催されました。
「Innovation for the Next Stage -肺癌にかかわるすべての人のために-」をテーマとし、
分子標的治療や免疫療法の基礎から最新情報までを含んだ17のシンポジウム、ロボット手術などのビデオシンポジウム、20名を超える海外の著名な研究者による招請講演や、患者さん・家族向けのプログラムなど、肺がんに関係する内容を網羅した非常に充実した内容の学会でした。演題数はなんと、1560題もあったそうです!
やはり今年は第3世代EGFR-TKIであるOsimertinibの上市や、免疫チェックポイント阻害剤であるNivolumabの肺がんへの適応拡大、またPembrolizumabの良好な成績の発表がありましたので、全体にEGFR-TKI・免疫療法の演題が多かった印象でした。個人的には、超高齢者に対する手術・化学療法の適応に関する演題群、NGSを用いた組織・血漿DNAの解析についての演題群の多さに最近の時流を感じました。
近県ということもあり、当科からも以下のように複数演題を提出していました。
荒金 尚子 診療教授 S10-5 「liquid biopsyは実用的バイオマーカー検査として有用か」
(シンポジウム10 肺がん薬物療法の実用的バイオマーカー)
中村 朝美 助教 O-3-11 「血漿分子マーカーを用いたafatinib耐性化機序と効果予測因子の検討」
(一般演題(口演)37 分子標的治療1 )
小宮 一利 助教 P-3-366 「nab-paclitaxel治療中に黄斑浮腫を来した非小細胞肺癌の一例」
(一般演題(ポスター)168 症例報告20 )
安部 友範 先生 P-2-61 「肺扁平上皮癌におけるDiscoidin Domain Receptor 2の機能解析」
(一般演題(ポスター)73 Translational research1 )
大学院生の 中島 O-1-72 「高感度EGFR遺伝子変異検出法におけるDNA自動抽出装置の有用性」
(一般演題(口演)15 遺伝子解析 )
荒金診療教授の発表は、福岡国際会議場の3F メインホールがほぼ満席、立ち見も出ている状況でした。
当院を主体として行った臨床試験;HASAT studyの結果や、本学会にも招待されていたOxnard先生らの論文も踏まえつつ、この1月から開始を予定している血漿DNAを用いてT790M変異を測定し Osimertinibの臨床的効果との関連をみる臨床試験について紹介し、多くの先生方にご興味を持って頂くことができたようです。
引き続き同臨床試験への参加施設を募集中ですので、ご協力いただけるご施設がございましたら、ご連絡お願いいたします。
一転して、下図はご自分のポスターの前で笑顔の小宮先生です。
nab-PTX投与中に視力低下を訴えられ、精査の結果 タキサン系抗がん剤の稀な有害事象である黄斑浮腫を呈し、早期の薬剤中止と点眼・内服などにより症状が改善した症例を報告しました。
視力は患者さんの生活に密接にかかわるため、臨床医が頭に置いておきたい副作用です。
今回は、研修医も2名(吉永君、八並さん)、病棟の仕事の合間を縫って学会に勉強に来てくれました。
忙しい臨床の中でも、常に新しい情報を学ぶこと、また自らが得た知見を積極的に発信していく必要性を、感じてくれたことと思います。
今後とも、全国、全世界の先生方と経験や知識を共有しあい、それを佐賀の患者さん方にも身近な医療として還元していければ、と思います。
(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科