学会報告 日本臨床検査自動化学会

去る2016年9月22~24日、神奈川県 横浜市のパシフィコ横浜にて、日本臨床検査自動化学会 第48回大会が行われました。
全国の臨床検査に関わる医師、検査技師、機器・試薬メーカーが参加する学会で、同時に大きな機器展示会も開かれ、とても情報の多いにぎやかな学会でした。
 

当院からは呼吸器内科より、大学院生の中島が

「高感度EGFR遺伝子変異検出系におけるDNA自動抽出装置の有用性」という演題で発表してきました。


当科では以前より、肺がんにおける重要な遺伝子変異であるEGFR遺伝子変異について、血液sampleを用いて全自動で高感度に検出する方法を開発し、前向き試験(HAnshin-SAga T790M;HASAT study, Sueoka-Aragane N, Cancer Sci 2016)などによりその有用性を確認してきました。


最近注目を集めているLiquid biopsyですが、血液中に存在するがん細胞由来のDNAを用いて遺伝子変異を調べるということで、必要なのは採血のみであるので、従来の気管支鏡やCTガイド下生検、手術による生検などに比べ、患者さんへの負担が小さく、反復して検査が行えるという利点があります。

しかしながら、当然血液中に存在するそのようなDNAは極々微量で、もちろん目にも見えませんので、これを検出するためには高い技術が必要となります。京都のARKRAY株式会社が製作したi-densyTMという装置を用いてこれを検出する手法について、同社と共同研究しMBP-QP法というとても簡単で高感度な系を開発したのですが、競合する検査系もあり、世界に広く認知されるには至っていないのが現状です。


当然、検査系自体の開発は最も大切なものではありますが、患者さんから提供いただいた血液sampleを最も良い状態で検査するためには、検査までの下準備もおろそかにできません。
検査までの手順(血漿の分離、保管、DNAの抽出)も検査結果に非常に大きな影響を及ぼすことが分かっており、今回我々は特に「血漿DNAの抽出法」に着目しました。


従来から行っているスピンカラムを用いた手動による血漿DNA抽出法と、磁性ビーズを用いた自動による血漿DNA抽出法を比較した研究が、今回発表の内容です。(前置きが長かったですね。)
この2つはDNA収量のみならず、そのDNAの質にも差があるらしいことが分かってきました。現在追加実験を行いながら、投稿論文を鋭意作成中です!



日本の九州の隅っこの佐賀から、日本の技術力を生かして患者さんの明日の診療に役立つ研究を目指して、今日も地道に頑張っています。

(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科