血小板が正常の100分の1しかない状態での、多発性脳出血。当直をしていて、夜中のCT室でその画像が映し出されたときの絶望的な空気を、今でも思い出します。しかし1ヶ月後、患者さんは元気に歩いて退院することができました。何が起こっていたのか、何がよかったのか、いろいろ考えるうちに、ある仮説にたどり着きました。「Cerebral amyloid angiopathyの合併に、ステロイドと大量グロブリンの投与が奏功した」というその仮説はJAMA Neurology誌に興味を持っていただくことができ、掲載に至りました。
血液内科の研修医であった頃、「血小板数が少ないというだけで、必ず出血を来すわけではない。血小板減少症の患者さんが出血を来したとき、他の原因を探すことを怠ってはならない」と教わりました。ぱっと見、このような症例の治療は容易ではありませんが、その余地があるということを広く理解していただく機会になれば、と思います。
“Domino-style cerebral bleedings in a patient of immune thrombocytopenic purpura”
Kitamura H, Shindo T, Yakushiji Y, Yoshihara M, et al.
JAMA Neurology.
Published online February 22, 2016. doi:10.1001/jamaneurol.2015.4508
http://archneur.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2491445
最終更新日:2016年2月23日
(C)佐賀大学医学部附属病院血液・呼吸器・腫瘍内科